思ってたのと違う! 女王は最愛の騎士ではなく、狂犬と結婚を強要される
 数秒間触れ合い、離れるだけの優しい口づけ。
 それが終わった直後、名残惜しさを感じるのは何故なのだろう?

(もっと、してほしいと思うなんて……おかしいわ……)

 リベルラは紫色の瞳をうっとりと潤ませて、彼に物欲しそうな視線を向けた。
 そんなこちらの姿を満足そうに眺めた男は、熱に浮かされた表情を浮かべながら、唸るように声を発した。

「そんな顔をされたら、堪んねぇな……。この先に、進みたくなっちまう」
「さ、先って……!」
「あんた、閨の経験は?」

 女王は想像もしていなかった質問を受けて、固まる。
 馬鹿にされたと勘違いし、リベルラはガルドラを怒鳴りつけた。

「わ、私は女王よ!? 当然でしょう!?」
「そうかい。そりゃ、楽しみだな……」

 閨教育はすでに受けていると豪語すれば、彼は含みのある笑顔を浮かべて婚礼の日を待ち望む。
 そんな彼の反応が、リベルラにとっては不思議で仕方ない。

(1つの寝台で、身を寄せ合って眠れるようになるだけでしょうに……)

 異性との添い寝など、平民であれば幼子のうちに当然済ませているはずだ。

(何が一体、そんなに嬉しいのかしら……?)

 リベルラはさっぱり理解できぬまま、彼と身体を離して別れを告げたのだった。
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