ただいまヒロイン代理中!
「あのとき、私は勢いだけで書いてたの。それはそれで楽しかったんだけど、プロットや詳しい設定なんて全然作ってなかったせいで、途中で行き詰まっちゃってね……」

「そうだったんですね……」

「まあ、それでも完結させたくて、授業中にこっそり携帯で執筆していたら……さっきも話した通り、先生に見つかって没収。そのあとは、受験や進学、就活で毎日が忙しくなって、思い出したときには、もうすでに後の祭りだったってわけ」

「…………」

「まあでも、気にしないで。今となっては、青春の思い出の1ページって感じだから」

 舞さんが苦笑いしながら肩をすくめる。

 書きかけの暴走族小説のことは、もうとっくに彼女の中では、『過去の終わったこと』として、折り合いがついているんだ。

 そう思うと、『続きを書いてください』とは余計に言いづらくなって、唇をきゅっと噛みしめた。

 でも――、あの真っ白で何もない世界に、ぽつんと一人取り残された蓮の姿が脳裏に浮かぶ。

 私に向かって胸の奥が切ない音を立てた。

 蓮からの頼みなのもあるけれど……私自身が、あいつに美月さんを会わせたい。

 もうあんな果てしなく広くて寂しい世界に、蓮を一人ぼっちでいさせたくない。

 それに、何よりも――私が舞さんが書いた、あの小説を一番楽しみにしてい読者なんだ!

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