花囲い
放課後は図書室へ寄った。本を借りたかったのもあるが、とにかくひとりで静かな場所にいたかった。
短編集を探していると、司書の先生が声を掛けてくる。
「あら、井𡈽くんは?」
「……え?」
「今日は一緒じゃないの?」
「ち、違いますよ!」
思ったより語気を荒げてしまい反省する。先生は少し驚いたような顔をしていた。
「ごめんなさいね。いつも一緒にいるからてっきり……」
私は頭を下げて、その場を離れた。
違う。違うのに。
どうして誰もそう思ってくれないんだろう。
図書室を出ると、生徒会室から話し合いをする声が聞こえてきて、私はほっと安堵する。生徒会で集まっているなら、井𡈽くんもそこにいるはずだ。
今日は会わずに帰れるかもしれない。そう思ったその時だった。
「探したよ」
耳のすぐ後ろから聞こえる声。
私は思わずその場で飛び上がった。