花囲い

「きゃあ!」
「ごめんごめん、驚かせたね」

 眉を下げて笑う井𡈽くんの姿に、私は心臓を抑えて縮こまる。

「い、井𡈽くん。生徒会なんじゃ」
「ああ、あれは一年生だけ会議してるんだ」
「そう……」
「あ、そうだ。はいこれ」

 そう言って井𡈽くんが差し出したのは、私のハンカチだった。

「教室に落ちてたよ」
「え、ありがとう」
「猫柄なんだね」

 私はそれを反射的に受け取った。家の近所の雑貨屋で買った、茶色い猫が刺繍されたハンカチ。確かに私のものだ。

「かわいい」

 井𡈽くんは目を細めて笑う。たったそれだけなのに、なぜか心がざわつく。

 かわいいとかそんなことを言われたからじゃない。あのハンカチは、昨日持って来て制服のポケットに入れっぱなしだった。

 いつ落としたんだろう。
 ――本当に教室で拾ったのだろうか。
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