花囲い

 息も切らさず、悠々とした佇まいで。ただそこにいるのが当たり前かのように。

 最初から私の逃避行の連れですとでも言うように。井𡈽くんは片手をポケットに手を突っ込んで立っていた。

「お待たせ」

 私は思わず後退りする。

「なんで、」
「なんでって?」
「どうしてここが分かったの。」

 どうして、そう聞くと井𡈽くんは首を傾げた。

「分からない」
「は……?」
「でも、ここで会える気がした」

 そんなはずがない。偶然で説明できる距離じゃない。電車でたまたま途中下車した知らない町なのに!

 私はあまりの恐怖に走り出した。井𡈽くんは追いかけてこない。振り返ると井𡈽くんは歩いていた。なんの焦りも感じさせない、一定の速さで。

 なのに、どれだけ曲がっても。どれだけ人混みに紛れても。次の角を曲がると、またそこにいる。

「なんで……!」

 走り続けて息が切れる。もう足が重い。私は商店街を抜けた小さな神社へ駆け込んだ。
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