花囲い
♢
――昼休み。
購買へ向かう途中で財布を忘れたことに気づく。
「あー、しまったなあ」
仕方なく教室へ戻ろうとすると、後ろから声をかけられる。井𡈽くんだ。
「どうしたの?」
「財布忘れた」
「はいこれ」
なんの躊躇いもなく千円札が差し出された。
「いいって、悪いし」
「返してくれればいいから」
「……じゃあ、ありがとう」
人の目もあり、私は断りきれず受け取ってしまった。サンドウィッチを買って戻ると、クラスの女子がニヤニヤしながら絡んでくる。
「彼氏に奢ってもらった?」
「違うって」
「またまたあ」
下世話な笑い声が私を襲う。私は適当に笑って席へ着いた。井𡈽くんは少し離れた席で友達と話している。
こちらを見ていない。なのに、見られている気がした。そんなことを思う自分がおかしいだけなのかもしれない。
自意識過剰、だろうか。