花囲い



 ――昼休み。
 購買へ向かう途中で財布を忘れたことに気づく。

「あー、しまったなあ」

 仕方なく教室へ戻ろうとすると、後ろから声をかけられる。井𡈽くんだ。

「どうしたの?」
「財布忘れた」
「はいこれ」

 なんの躊躇いもなく千円札が差し出された。

「いいって、悪いし」
「返してくれればいいから」
「……じゃあ、ありがとう」

 人の目もあり、私は断りきれず受け取ってしまった。サンドウィッチを買って戻ると、クラスの女子がニヤニヤしながら絡んでくる。

「彼氏に奢ってもらった?」
「違うって」
「またまたあ」

 下世話な笑い声が私を襲う。私は適当に笑って席へ着いた。井𡈽くんは少し離れた席で友達と話している。

 こちらを見ていない。なのに、見られている気がした。そんなことを思う自分がおかしいだけなのかもしれない。

 自意識過剰、だろうか。
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