転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
実際最初に打たれた時、数日は腫れが引かず、口の中にずっと血の味がしていた。
私は衝撃に備え口を引き結ぶ。すると、乾いた音とともに左頬に激痛がした。
「ふふっ。これに懲りたら、私の前で生意気な態度を取らないことよ。もう行ってもいいわ。広場で裏方の仕事をしなさい。来客に失礼のないようにね」
「……はい」
ようやく解放され、私は部屋を出た。すると、部屋の中からけたたましい笑い声が聞こえた。今日も見事にいじめてやったと、全員が手を叩いて楽しんでいるようだった。
頬はヒリヒリとして熱い。きっと赤くなっているのだろう。ちゃんと防御していたせいか、口の中に被害はないようだった。
手で頬を隠していたが、すれ違う使用人たちには、なにがあったかバレている。しかし、誰も私に言葉を投げかけないのは、アルマやカインの目を気にしてのことだ。さすがに王宮で働く全員が、アルマやカインの仕打ちに納得しているわけではないと思う。現にアッシュは心配してくれるし、いたわりの眼差しを向けてくれる人もいる。
だけど、皆生活があり、守るべき家族がある。王や王女の酔狂な加虐趣味に異を唱えるなんて、できやしないのだ。
広場へ戻ると、祝宴の用意は整っていた。白いテーブルには厨房で作った豪華な料理が並べられ、前方には王族が座る立派な玉座がある。他国からやってきた来賓もぽつぽつといるようだ。
直ちにするべきことがなかったので、私は邪魔にならないように広場の隅に移動した。使用人たちは来賓に飲み物を配っているが、頬の赤みが引くまでは人前に出ないほうがいい。不用意に人前へ出て、来賓が不審に思ったら、あとからカインとアルマに厳しい罰を与えられるかもしれない。
平手打ちよりも過酷な罰なんて冗談じゃない。私はなにがなんでも長生きするんだから!
というわけで、立ち回りは上手く、目立たず、騒がず、逆らわず、だ。
広場に人が増え熱気が籠ると、ほどなくラッパが高らかな音を響かせる。誕生祭の始まりを告げる合図だ。
前方の舞台に国王カインが現れ、次に王妃が王子の手を引いて姿を見せる。
拍手が巻き起こり、カインがそれを制すと静寂が訪れた。
そして、本日の主役であるアルマが神々しい演出で登場する。
プリマヴェーラを象徴する月桂樹の冠をいただき、胸にはドラゴンアイのペンダント。私をいじめていた時の意地悪な表情はなく、一切の悪事を知らない清純な笑顔で中央に立つ。
カインは彼女へと歩み寄り、朗々と叫んだ。
「各国の諸君、本日はアルマの誕生祭にようこそ。プリマヴェーラであるアルマは、本日九歳を迎えた。これからも世界の繁栄と豊作を祈り、日々精進することであろう。それでは、アルマ。皆に一言述べなさい」
「はい、お父様」
カインに促され、アルマは深く息を吸い込んだ。
その時だ。
遠くから聞いたことのない生物の咆哮が轟いた。空気を切り裂く雷鳴のような、他を威圧する響き。
全員がきょろきょろとし、その正体を探す中、上を見ていた来賓が指をさし、叫んだ。
「見ろ! あれは竜だ! 竜がいるっ!」
顔を上げると、悠々と空を旋回する漆黒の巨大生物がいた。人々は空を指さして悲鳴に似た声をあげ、中には腰を抜かす者もいる。『竜』という生物について、今世で私の持つ知識はないに等しい。でも、前世で竜を討伐する携帯ゲームで遊び、ファンタジー系の小説を読み漁っていたため、ある程度姿形に予想はついており、腰を抜かさずには済んだ。
私は衝撃に備え口を引き結ぶ。すると、乾いた音とともに左頬に激痛がした。
「ふふっ。これに懲りたら、私の前で生意気な態度を取らないことよ。もう行ってもいいわ。広場で裏方の仕事をしなさい。来客に失礼のないようにね」
「……はい」
ようやく解放され、私は部屋を出た。すると、部屋の中からけたたましい笑い声が聞こえた。今日も見事にいじめてやったと、全員が手を叩いて楽しんでいるようだった。
頬はヒリヒリとして熱い。きっと赤くなっているのだろう。ちゃんと防御していたせいか、口の中に被害はないようだった。
手で頬を隠していたが、すれ違う使用人たちには、なにがあったかバレている。しかし、誰も私に言葉を投げかけないのは、アルマやカインの目を気にしてのことだ。さすがに王宮で働く全員が、アルマやカインの仕打ちに納得しているわけではないと思う。現にアッシュは心配してくれるし、いたわりの眼差しを向けてくれる人もいる。
だけど、皆生活があり、守るべき家族がある。王や王女の酔狂な加虐趣味に異を唱えるなんて、できやしないのだ。
広場へ戻ると、祝宴の用意は整っていた。白いテーブルには厨房で作った豪華な料理が並べられ、前方には王族が座る立派な玉座がある。他国からやってきた来賓もぽつぽつといるようだ。
直ちにするべきことがなかったので、私は邪魔にならないように広場の隅に移動した。使用人たちは来賓に飲み物を配っているが、頬の赤みが引くまでは人前に出ないほうがいい。不用意に人前へ出て、来賓が不審に思ったら、あとからカインとアルマに厳しい罰を与えられるかもしれない。
平手打ちよりも過酷な罰なんて冗談じゃない。私はなにがなんでも長生きするんだから!
というわけで、立ち回りは上手く、目立たず、騒がず、逆らわず、だ。
広場に人が増え熱気が籠ると、ほどなくラッパが高らかな音を響かせる。誕生祭の始まりを告げる合図だ。
前方の舞台に国王カインが現れ、次に王妃が王子の手を引いて姿を見せる。
拍手が巻き起こり、カインがそれを制すと静寂が訪れた。
そして、本日の主役であるアルマが神々しい演出で登場する。
プリマヴェーラを象徴する月桂樹の冠をいただき、胸にはドラゴンアイのペンダント。私をいじめていた時の意地悪な表情はなく、一切の悪事を知らない清純な笑顔で中央に立つ。
カインは彼女へと歩み寄り、朗々と叫んだ。
「各国の諸君、本日はアルマの誕生祭にようこそ。プリマヴェーラであるアルマは、本日九歳を迎えた。これからも世界の繁栄と豊作を祈り、日々精進することであろう。それでは、アルマ。皆に一言述べなさい」
「はい、お父様」
カインに促され、アルマは深く息を吸い込んだ。
その時だ。
遠くから聞いたことのない生物の咆哮が轟いた。空気を切り裂く雷鳴のような、他を威圧する響き。
全員がきょろきょろとし、その正体を探す中、上を見ていた来賓が指をさし、叫んだ。
「見ろ! あれは竜だ! 竜がいるっ!」
顔を上げると、悠々と空を旋回する漆黒の巨大生物がいた。人々は空を指さして悲鳴に似た声をあげ、中には腰を抜かす者もいる。『竜』という生物について、今世で私の持つ知識はないに等しい。でも、前世で竜を討伐する携帯ゲームで遊び、ファンタジー系の小説を読み漁っていたため、ある程度姿形に予想はついており、腰を抜かさずには済んだ。