転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
 父王の狼狽(うろた)える様子に気づいたのか、アルマは助けを求めてきょろきょろとし始める。誰でもいい、他の誰かに助けを求めたいと視線を彷徨(さまよ)わせていた。だが、彼女が視線を向けると、人々は一様に顔を逸らす。いつもアルマに服従している侍女や使用人、プリマヴェーラだと持ち上げていた貴族たち。全員が見て見ぬふりをした。
 竜大公は世界の覇王である。王族の地位は国力に比例するため、世界一の国力を誇るドラン公国の大公は王の中の王だ。パルティナ国のように、辺境に位置するド田舎の王とは比べ物にならない。
 つまり、この場面でアルマとカインを救える者は誰もいないのだ。
 さあ、この状況をどう乗り切るのか。ドラゴンアイが元々彼らのものではなく、誰かから奪ったとか盗んだとかだったら、国を揺るがす大事になる。
 私は一観客のように、余裕でその様子を眺めていた……が、不意にアルマと視線が合ってしまった。
 ……嫌な予感がした。とても嫌な予感が……。
 アルマは瞳を輝かせた。この場を凌ぐ一手を見つけた、と言わんばかりの薄笑いを浮かべて。
「竜大公様! あの子です、あの子がドラゴンアイのペンダントを持ってきたのです」
 こちらを指さし叫ぶアルマ。人々は引き潮のごとく私の側からいなくなる。ぽつんと残された哀れな私に、竜大公がゆっくりと視線を向けた。
 ああ、竜大公の姿を見たいばかりに、前方に移動するなんてバカだった。後ろで大人しくしていれば、巻き込まれずに済んだのに。己の愚かさに嘆くと同時に、竜大公の視線が私に突き刺さる。
 視線が合うと、ほんの一瞬、竜大公が目を見開いた。
 私は身じろぎもせずに(たたず)み、彼の行動を待つ。
 ドラゴンアイなんて知らない、持っていたこともない、嘘を吐いているのはアルマだ、と言っても、きっと信じてはくれないと思う。王族と平民のどちらの言葉を優先するかなんてわかりきったこと。今までだってそうだったのだから。
 竜大公はドラゴンアイがアルマに渡った経緯を知りたいと言った。ドラゴンアイを彼女に渡したのが私(違うけれど!)だとしたら、竜大公はどうするだろう。なにか、罰を下されるのだろうか。
 考えを巡らせていると、竜大公がこちらに向かって歩き出した。その背に向かい、甘ったるい声でアルマが言った。
「その子は孤児なのです。貧しさゆえに、盗みを働いてしまったのかもしれません。どうか責めないで下さい!」
「おお、アルマ、なんて優しい子だ。盗品を押し付けられていたのに庇うだなんて! さすがプリマヴェーラ、パルティナ国の誇りだ」
 カインが大袈裟に感動しながら加勢すると、今まで沈黙していた侍女たちも声をあげた。
「まあ! (だま)されていたというのに、なんとお優しいアルマ様!」
「それに比べてネリーは救いようがないわ」
「仕方ないわ。叱る親もいないから常識が欠けているのよ。ほら、物を盗んでも平気な顔をしているわ」
 彼女たちは口々にアルマを称賛し、私を(おとし)める。さっきまで傍観者を決め込んでいたのに、変わり身は驚くほど早い。わかっていたことだけど、この国に私の味方はいないのだと思い知らされる。
 今まではどんなにみじめでも耐えられた。生きていく、という希望があったから。でも、濡れ衣を着せられた今、その希望も竜大公の気分次第で絶望に変わる。
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