転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
 せめて、十八歳を超えたかった。贅沢(ぜいたく)を言うなら、おばあちゃんになるまで生きたかった。
 嫌だ。私は死にたくない、生きたい!
 口を真一文字に引き結び、近づいてくる竜大公をじっと見つめる。アルマやカインや侍女たちの嘲笑を聞いても、彼は無表情だ。
 盗人だ、犯罪者だと怒号が飛び交う中で、竜大公だけ別世界にいるように。
 一秒を永遠に感じながら、やがて私の前に竜大公がやってきた。
「お前が持っていたのか?」
「りゅ、竜大公様。私はドラゴンアイを盗んでいません。持っていたこともありません。アルマ様に渡してもいません」
「…………」
 無駄な申し開きをすると、竜大公は押し黙る。嘘じゃない、と伝えるために、私は目を逸らさなかった。
 近くで見る竜大公は、遠くから見るよりも迫力があった。威圧感が息を詰まらせ、呼吸が上手くできない。
 圧倒的なオーラに追い詰められそうになった時、不意に竜大公が尋ねてきた。
「孤児か?」
「……え? あ、はい」
「母親は……どうした?」
「わ、わかりません。たぶん、亡くなったのだと思います……」
 曖昧に答えると、竜大公はまた沈黙した。彼の質問の意図は掴めない。
 でも、その質問に、私の気持ちは沈んだ。ひとりぼっちだという現実を、突きつけられたような気がしたから。
 近所の子どもたちが両親と遊んでいるのを見て、自分にもいるのかと祖母に聞いたことがある。そうしたら彼女は「お前が小さい時に亡くなったよ」と言ったのだ。
 祖母が他界する直前、自分と血が繋がっていないと告げた時も両親のことには触れなかった。
 だから、本当に両親はこの世にいないのだ。両親がどこかで生きているのなら、祖母はきっと私に告げてくれたと思う。優しい祖母を亡くした時から、私は本当の意味でのひとり。
 ひとりぼっちになったのだ。
 周りの人々は、盗人だと私を責め続け、今では他国の来賓ですら、竜大公に向かって「罰を与えよ」と声を荒らげている。
 そんな中、私と竜大公は見つめ合っていた。相変わらず、竜大公の顔に変化はない。だけど、鋭く黒い瞳の中に、なにかを懐かしむような切なさが見えた気がした。
 世界から恐れられる竜大公に感じられた一片の感情。それを不思議に思っていると、突然、竜大公が屈んだ。
「えっ!?」
 小さく叫んだ私の体はふわりと浮いた。すごい勢いで視線が揺れ、気づいたら地面が遠くなっている。
 なにが起こったの?と状況を把握する前に、顔の近くで竜大公の声がした。
「私と来い」
「……は? あの……」
 顔の近くで声がしたのは、竜大公が私を抱き上げたからだった。ただし、丁寧に抱き上げるというものではなく、雑に荷物を肩に抱えた、という状態だ。
 荷物になった私は身じろぎもせずひたすら混乱した。竜大公の力は強く、じたばたしてもきっと逃れられない。逃れられたとしても落ちてケガをしてしまうだろう。
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