転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
 先導するグレイグの後ろから、白亜の城に入る。城の中はひっそりとしていて、あまり人の気配がしない。無駄に使用人が多く、ろくに働いていないパルティナ国の城とは大違いだ。侍女のような人と数人すれ違ったけれど、皆、静かにグレイグに頭を下げるだけで、余計なお喋りは一切しない。みすぼらしい格好の私がいても、視線を向けることなく表情も変えない。
 世界一と名高いドラン公国、その城では、使用人の品格でさえも一流なのだなあと感心した。
 一旦城を出て中庭を抜けると、宿舎のような二階建ての建物があった。グレイグはその建物の階段を上ると、一番手前の扉の前で足を止めた。
「こちらにしましょう。見晴らしがよく一番本邸に近い部屋です。使用人部屋ですが、とりあえずはここで。どうぞ入って下さい」
「ありがとうございます」
 恐縮しながら扉を開けると、中はとても広く、衣装棚にテーブルや椅子、生活に必要な物が全て揃っている。パルティナ国の下町で祖母と住んでいた家よりもはるかに豪華だ。
「わあ……」
「気に入りましたか? 食事はのちほど侍女になにか持ってきてもらいましょう」
「え!? そんな、自分で取りに行きます!」
「いいのですよ。今日はひとまずゆっくり休みなさい」
 優しい言葉遣いだけれど、圧は強い。グレイグはなにがなんでも、私をここで休ませたいようだ。
「申し訳ありません……お忙しい宰相様にいろいろと迷惑をかけてしまって」
「いえ。シリウス様に頼まれたのなら、責任を持ってやり遂げる、これこそが私の使命ですので」
 グレイグはくいっと眼鏡を押し上げると、誇らしげに胸を張った。竜大公への絶対的な尊敬と服従。突然連れてこられた怪しい平民少女にまで丁寧に接するなんて、まさに臣下の鏡である。
「それでは」と、去っていくグレイグの背を見送ると、私は部屋に入って椅子に腰かけた。休めと言われたのでとりあえず座ったが、なにもすることがないので困ってしまう。普段から勤労に慣れてしまっている体には、静かに座るという行動が苦痛に感じてしまうのだ。
 自分で言うのもおかしいけれど、とんでもないワーカホリックである。
 かといって、城の中を勝手に徘徊するのも……。
 仕方なく、窓を開けて外の様子を確認する。グレイグの言うとおり、窓からの景色は最高だった。
 間近に見えるドラウグル山は、青々とした木々とごつごつとした岩場のコントラストが美しく、飛び回る竜の姿がはっきりと見える。竜たちはそれぞれ色が違うようで、黒竜、赤竜、青竜など個性があった。
 窓から竜を見ていると、だんだんと心惹かれていく自分がいた。大きな翼で空を舞う自由な姿には、憧れを抱かずにはいられない。彼らはどんな生活をし、どんなものを食べているのか。その生態に大いに興味が湧く。
 竜たちを眺めながら、私は現状を振り返った。
 竜大公が、なにを考えて私をここに連れてきたかはわからない。だけど、しばらく滞在するなら、本格的に仕事を探さなくてはならないと思う。
 私はただの平民でドラン公国のお客様ではない。命を拾ったのなら、生きるために働くのは当然だ。
 そうだ、明日、なにか仕事を紹介してもらおう。もしかしたら、竜に関係する雑用もあるかもしれない。
 ドラウグル山を眺めながら、私は決意も新たに大きく背伸びをした。
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