転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
 翌日。
 私は仕事をもらうべく、グレイグを探して部屋を出た。
 本当は、竜大公に会いに行こうとしたのだけど、それは得策ではない、と食事を持ってきてくれた侍女に聞いたからだ。侍女の名はタリア。ふくよかでのんびりした感じの女性である。
 仕事をもらうために竜大公に会いに行きたい、とタリアに話すと、彼女は一瞬驚いた表情になり、それから真面目な顔つきでこう言ったのだ。
「竜大公様はお忙しい方だから、城内でお見かけすることはほとんどないわ。いつも執務室に籠ってお仕事をされているのでしょうね。各国の王ですら謁見するのに何か月も前から予約を入れるそうよ。仕事のことなら、竜大公様の代わりに城内を取り仕切っている宰相グレイグ様に相談したほうがいいわね」と。
 聞いておいてよかった。知らなければ、とんだ無礼者として新たな罪が加わるかもしれなかったわ。
 でもそう考えると、竜大公がパルティナ国を訪れたのは、本当に珍しいことだったのだ。国民が騒ぎ、王族が浮かれるのも当然。ただ、浮かれすぎてとんでもない(しゅう)(たい)(さら)したけれど。
 気さくなタリアは、私が竜大公に連れてこられた少女だと知っていたらしく、とても親切に接してくれた。
 竜大公自らが連れてきたということが、かなりの優位性を持つらしく、タリアはこのドラン公国についてのあれこれを嬉々として教えてくれた。
 竜大公シリウス・ドランの英雄(たん)や武勇伝。ドラウグル山の竜たちとドラゴンアイのこと。初めて聞く大国ドランの話は、どれも興味を惹かれるものだった。中でも、一番わくわくしたのは竜騎士隊の話だ。
 ドラン公国竜騎士隊は、竜の背に乗って公国を守護し戦う精鋭部隊であり、身分による階級が存在しない。
 彼らのなにが他の国の兵士と違うのか。それは『認定式』と呼ばれる竜との一騎打ちをクリアしなければいけない、ということだ。認定式で竜に挑み、戦いの中で、竜の喉元にある逆鱗(げきりん)に触れれば『相棒』と認定され、晴れて竜騎士になれる。ただ、竜に挑むのは命がけであり、認定式に臨む兵士の百人にひとりしか合格しない狭き門だ。
 しかし、竜大公シリウスは、当代の竜族の長、黒竜ティエリアの逆鱗にわずか数秒で触れた。ティエリアは唖然としたが、我に返るとシリウスを称えすぐに契約を交わしたらしい。契約を交わすと、竜と人は互いに繋がり、頭の中で会話ができるようになる、のだそうだ。
 やっぱり、あれはテレパシーだったのだ、と納得した。じゃあ、自分に竜の言葉がわかるのはどういう仕組みだろう。竜を見たこともなかったし、逆鱗に触れてもいないのだけれど。
「一般人でも竜の言葉がわかるの?」と、遠まわしに聞いてみたけれど、タリアはあり得ないと首を振った。
 ま、いいか。まずは、仕事をもらうことが先である。と、能天気な私は、考えすぎないことを心に決めた。
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