転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
 簡単な手書きの城内地図を携えて、この時間、グレイグが行きそうな場所を探す。地図はタリアが描いてくれたものだ。場所の名前などに、多少の文字が書かれているがその点は問題ない。祖母は読み書きができたので、私も平民でありながらある程度の学がある。
そういえば、マナーも算術も教えてくれたっけ。
 思い返してみると、祖母はわりと熱心に勉強を教えてくれていた。その知識を使うことはないと思ったけれど、こういう状況になって、読み書きができてよかったと祖母に感謝している。
 グレイグには朝のルーティンがあって、だいたいの行動が決まっているそうだ。食事が済むと、まず竜大公へ朝の報告、竜騎士たちと朝の朝礼、使用人たちへの注意事項の伝達。それからまた竜大公の元に戻り執務を行う、という。
 彼を捕まえるなら、使用人たちに会いに来るタイミングがベストだと思い、中庭から城内へ向かう廊下で待ち伏せをする。
すると、数分も経たないうちにグレイグが姿を見せ、私は勢いよく前に走り出た。
「おはようございます! 宰相様!」
「わっ!」
 勢いがよすぎたのか、図らずもグレイグを驚かせるような形になってしまった。
 確かに、いきなり子どもが飛び出したらびっくりするよね。半歩あとずさり胸を押さえたグレイグに、私は心から頭を下げた。
「も、申し訳ありませんっ」
「い、いえ、いいのです。それで、どうかしましたか? なにか問題でも?」
「宰相様にお願いがあるのです。私に仕事をさせてくれませんか? なんでもいいです。なんでもします! 元気なので早朝から深夜まで働けます」
「仕事……? 働きたい、と? どうして?」
 なぜかグレイグは目を見開いた。そんな彼に私は詰め寄った。
「そもそも私はお客としてドラン公国に来たわけではないですから。働くのは当然ですよね」
「しかし、シリウス様はあなたに仕事を与えろとは言っておりません。ゆっくりなさったらいかがです?」
「いいえ、そういうわけにはいきません。あ、でも、竜大公様が私を疑って、公国内を歩き回ってほしくないと言うなら従いますが……」
 そう、その可能性もあるのだ。認められている、と言われても、盗人としての容疑が晴れているのかどうかはわからない。
 盗んでいない、と主張した。絶対に、間違いなく、確実に『盗んでいない』のだけど、そこにはなんの証拠もないのだ。
 少し悲しくなり(うつむ)くと、慌ててグレイグが言った。
「シリウス様はあなたを疑ってなどいません」
「ほ、本当ですか?」
「ええ。信じて下さい」
「わかりました。じゃあ、仕事はさせてもらえますよね?」
 悲しい顔から一転、強気に尋ねると、グレイグはたじろいだ。竜大公を信頼し信奉している彼だから、少しでも意向に沿わないのは嫌なのだと思う。
でも、私だって暇なのは嫌なのです! 我儘かもしれないけれど、勤労少女は働いていないとダメになってしまうんです。
 そんな気持ちを表情に乗せて訴えかけた。すると、グレイグは諦めたようにため息を吐いた。
「わかりました。それでは『ユルング商会』の書類の整理をお願いしましょう。商会から受け取った書類を日付ごとに仕分け、ファイルに綴じ込む仕事です。簡単ですよ」
「え……それは、座ったまま動かないお仕事では?」
「はい、そうですが? おや、不満ですか? 疲れず汚れず、いい仕事だと思いますよ?」
「はあ。あの、私、もっと外に出て動く仕事がしたいです! ずっとそうやって暮らしてきたので、体も慣れていますから」
 グレイグは困ったように眉間に皺を寄せる。そして尋ねた。
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