転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
「では、一応、希望を聞きましょう」
「ありがとうございます。あの、竜に関する仕事がいいです。雑用でもなんでもします」
「竜? 珍しいですね。普通は恐れるものですよ?」
「恐れる? 竜は凶暴なのですか?」
 私は首を(かし)げた。黒竜の言葉は明るく陽気で、とても凶暴には思えなかったから。
「凶暴ではありませんが、ただやはり見た目に恐怖心を抱く者が多いのは事実です。ですから、竜の世話をする『お側人』はなり手が少ない。しかも、竜自体気難しく、お側人を気に入らないことも多いですしね」
「そうなのですね。でも私、頑張ってみたいです」
「……わかりました。ですが、しばらく待っていただけますか? シリウス様に判断を仰ぎます」
 そう言われたら頷くしかない。ドラン公国の大事な竜たちに関わることなので、判断を仰ぐのは当然だ。
 竜大公が私を疑っていないなら、たぶん聞き入れてくれるだろう。そんな予感があった。
 グレイグと別れて部屋で待機していると、タリアがやってきた。彼女はグレイグの伝言を受けて、私を竜のお側人であるテトラのところに案内してくれると言った。
 タリアにつき従い、竜の生息区域であるドラウグル山に向かう。部屋の窓から見ると近いように思えたが、実際の距離は結構あった。しかも、行き道には大小様々な岩石が落ちていて歩きにくい。竜たちは飛んで移動することが多いから、道の整備の必要性がないのかもしれない。
 急こう配を登っていくと、やがて平らになった丘に出た。そこには、しっかりとした造りの小屋が建っている。
「テトラ爺さん! いるかしら?」
 タリアが大声を張りあげる。すると、小屋の中から体格がよく腕っぷしの強そうな老人が現れた。
「おや、なにか用かな?」
「新しいお側人を連れてきたから、仕事を教えてあげてほしいの。宰相様の御命令よ」
「宰相様の? 直々に?」
「ええ、そう」
 私はタリアの背後から出て、テトラに挨拶した。
「初めまして! ネリーです。一生懸命働きます。よろしくお願いします!」
 するとテトラの表情が一瞬硬直した。新しいお側人が子どもだったことが意外だったのか。または、別の理由か。
 とにかく、なにかにすごく驚いているようだ。
「こ、こ、子どもじゃないか。勘弁してくれ、竜たちの世話に子守りまでさせる気か?」
 ……どうやら前者だったらしい。テトラは煩わしそうにちらりと私を見て、タリアに文句を言う。
 うっ、確かに子どもだけれど、勤労への意欲は誰にも負けない。まず働きを見てから決めてほしい、と言おうとした時、タリアが真面目な顔でテトラに告げた。
「ネリーは竜大公様が連れてきた子よ。いいの? そんなこと言って……本当にいいの?」
「なっ……は、早く言えよ。そういうことなら話は別だ。引き受けるよ」
 なんと、あっさり決まった。さっきまで渋っていたテトラは、今やもう、笑顔でこちらを見ている。竜大公の名前を出すだけで態度を変えるなんて、そんなに怖いの?
 確かに眼力強めだし、なにを考えているかさっぱりわからないけれど、私に言わせれば、無能のカインなんかより百倍いい王様に見えるけど?
とにかく仕事がスムーズに決まったのは竜大公のおかげ。素直にお礼を言おう。
 ありがとう竜大公!
「じゃあ、早速仕事をしてもらうよ。忙しいからな。覚悟しておけよ」
「はいっ。体力には自信があります」
「よし、よく言った!」
 小屋でタリアと別れ、私とテトラは更に山を登る。竜の生息区域はまだ先にあるらしい。
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