転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
 まず、各部屋の汚れた藁を外に向かって掃き出し、簡単に掃除する。その後、併設された藁倉庫の中から、新しい藁を持ってきて各部屋に敷く。汚れた藁は纏めて焼くので一旦集落外の廃棄場へ放置。藁を抱えて階段を上り下りしながら寝床と集落外を行ったり来たりし、一連の作業が終わる頃には、足ががくがくになっていた。
 体力には自信があると思ったけれど、階段の上り下りは思ったよりハードだった。でも、大丈夫。若いからきっと、明日には体力は回復しているはず。
 前世の弱ボディから、強ボディにグレードアップされた私の体は『絶対に生き抜く』という人生の目標もプラスされて、より頑強になっているのだ。
 寝床の仕事を終えたので、テトラを探すついでに竜たちの集落を見て回ることにした。寝床から一番近いのは、彼らの食堂である。そこは人間でいうところの食堂とは全く違った。
肉や果物といった食料が、それぞれ決まった場所に積まれていて、そこから好きなものを取って食べる仕組みのようだ。時間制になっているのか、今は大きな竜が三体、会話をしながら食事をしている。
『水場が汚染されたらしいぜ』
『坑道の排水が流れ込んでいるんだろ? テトラ爺さんはなんとかしてくれないのか?』
『ダメだ。水の状態がおかしいと訴えかけてはいるんだが、言葉が通じないからどうしようもない。見た目は透明で変わりがないから無理もないが。早急に竜騎士隊の奴らに頼んで、なんとかしてもらうしかないか……』
 水場? それは竜たちの水飲み場のこと?
 坑道の排水が飲み水を汚染するって、もしかして『鉱毒水』かな? ヒ素やカドミウムとかが流れ込んで、健康に被害を及ぼすってニュースかなにかで見たと思う。
 だとしたら……大変だわ。
「あのっ、すみません!」
 話しかけると、三体の竜の視線がこちらに集まった。そのうちの一体が私に問いかける。
『嬢ちゃん、今、俺たちに話しかけたか?』
「はい。水場が汚染されたんですよね? 急いでテトラさんに伝えます! あ、私はネリー、新しいお側人です」
『新しいお側人? もしかして……俺たちの言葉がわかる?』
「はい」
 竜たちはいよいよ困惑して私を見る。
『まさか、竜と契約を?』
「いいえ、契約はしていません」
 首を振って答えると、彼らは一様に目を見開き、なんと雄叫びをあげたのだ。
『本当かよ。すげえ! 契約なしでドラゴンスラングを理解する人間なんて初めて見た! もしかして、この子……』
『ああ、そうだ! 例のあれだよな?』
『うん、あれだ。何百年ぶりだろう!』
 きらきら光る竜たちの瞳を見て、私は首を捻った。
 例のあれ? それはなに? 何百年ぶり? えっと、意味がわからないんですけど!?
 話の流れから、ドラゴンスラングが『竜の言葉』だとは理解した。
 あとのことはさっぱり不明だけれど、なんとなく歓迎してもらえているのは肌で感じる。
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