転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
「まあ、よく似合うわよ、ネリー!」
「本当ね、陰気な城内に花が咲いたみたいだわ」
「ちょっと、陰気って言わないの! 宰相様が聞いていたらどうするのよ!」
 朝の使用人食堂にて、侍女の皆さんは非常に盛り上がっている。どうして、私が使用人食堂にいるかというと、タリアが「皆で一緒に食べない?」と誘ってくれたからだ。
パルティナ国の侍女たちにいじめられていた経験があるので少し怖かったが、行ってみると雰囲気は全然違った。
 冷静に仕事をこなし、無駄口を叩かないプロフェッショナルだと思っていた侍女たちは、実はとても快活でお喋りだった。グレイグに案内されている私を見て、本当は「何者!?」と興味津々だったらしい。更に竜大公自らが連れてきたという話が広まると、使用人たちの私に対する興味は俄然高まった。話したくてうずうずしていた使用人たちは、私がタリアとともに食堂に姿を現した途端、取り囲んで質問攻めにしたのである。 
 私がただの平民だと告げても、彼女たちは信じなかった。それだけ竜大公という人物が、他人に全く興味がなく、情け容赦がないと認識されているからだろう。
 いや、本当にただの平民少女なんですけどね……。ご期待に沿えず申し訳ない、と思いながらも、私は楽しく食事の輪に加わった。
 それから、侍女のひとりが私の服のほつれと破れを見つけ、新しい服を作ってくれると言い出した。そこから話はどんどん進んだ。皆でドラン公国侍女の制服を、裁断したり装飾を加えたりして、ついに子どもサイズの侍女服が完成したのである。
 青色の落ち着いた色はそのままに、子どもらしく腰元をふんわりとさせ、歩きやすいように丈は膝下に。お側用人であることを加味して動きやすさを重視しているが、リボンやフリルは欠かさないという熱の入れようだ。長い髪が邪魔にならないようにと、同じ生地でヘアバンドも作ってくれた。生成りのエプロンにはふたつもポケットがついていて、細かな物が入れられるようになっている。
 至れり尽くせりとはこのことだ。汚れていた私の服はあっという間に正式なドラン公国の侍女風になった。
「あ、ありがとうございます。皆さん」
「ふふふ。いいのよ。皆息抜きでやっているんだから、ね?」
 弾むようなタリアの言葉に、侍女たちが頷いた。ドラン公国の侍女は、厳しい審査を経て選ばれるエリートだ。だから皆、仕事に誇りを持っている。厳しい規則があっても決して破ることなく、竜大公のために働いているのだ。でも、使用人たちが集まる食事時などは、日頃のストレスを吐き出すようにお喋りに興じるようだ。
「本当にとても似合うわよ。竜のお側人、頑張ってね!」
「はい。ありがとうタリアさん、皆さんも! 今日も一日、お仕事頑張りましょう!」
 そう返すと、全員が微笑んで頷いた。
 パルティナ国にいた時、侍女は意地悪で、仕事もかなり過酷だった。使用人たちの間はギスギスしていて、こんな風に楽しく会話している光景は見たことがない。そういえば、王妃付きの侍女とアルマ付きの侍女は特に仲が悪かったなと、ふと思い出した。
 きっとドラン公国は、トップに君臨する竜大公が不正を許さない厳しい人だから、働く人も自然とそうなっていくのだろう。竜大公、あれから一度も会えていないけれど、もし会えたら、こんな素晴らしい国に連れてきてくれてありがとうって言いたい。
……ちょっと怖いけど、頑張って言おう。
 そんなことを考えながら、私は竜の集落に向かった。
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