転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
「死んでもいいなんて、言っちゃダメ。あの……シオンさん。ちょっとオリオンに話を聞いてもいいですか?」
『あ、ええ。いいわよ。オリオン、新しいお側人のネリーよ。彼女は私たち竜族の言葉がわかるとても貴重な人間でね、あなたにお話があるんですって』
オリオンは動かず、顔だけをこちらに向けた。美しい宝石ドラゴンアイと同じ色の瞳が、腹痛の苦しみに揺れている。ああ、体を動かすのも辛いのね、気の毒に。
「オリオン? おはよう。ネリーです。辛いかもしれないけれど、ちょっと聞かせてね。お腹が痛くなるのは、どんなものを食べた時?」
『……肉……とか。野菜やキノコでもたまに……』
「ちゃんと噛み切ってから食べている?」
『固くて……噛み切れないから、そのまま呑み込んじゃう……』
「そっか……」
固くて丸呑み……か。うーん、消化不良を起こしているのかもしれないわ。さっき見た小竜の食事は、大人と同じで肉も大きめ、果物や野菜も切らずにそのままだった。その辺に問題がありそう。オリオンだけが腹痛を訴える理由は、生まれつき消化器官が弱い可能性がある。人間だってひとりひとりに体質があるように、竜にだってあるに違いない。消化のいい食事に変えたら、少しは改善の見込みがあるわ。
とにかく、やってみないことには始まらない。
そう思い、私はシオンに向き直った。
「シオンさん、小竜たちの食事ですけど、私が手を加えてもいいでしょうか?」
『具体的にどうするの?』
「肉が固いようなので、柔らかくして、他の食材も食べやすくしようと思います!」
『肉を柔らかく? できるの?』
私は頷いた。前世の知識で一番多いのは、食べ物や料理に関する雑学だ。なぜかというと、好きなものが好きなだけ食べられなかったから。元気になったら、美味しい物をたらふく食べて丸々太ってやる。そう思っていたのだ。結局叶わなかった夢だけれど、それが今、役に立つだなんて人生なにが起こるかわからない。
オリオンを心配するシオンを残し、私は食事場に戻った。食事を終えた小竜たちは、広場へと遊びに行ったようでそこには誰もいない。食事場には肉と少しの果物が残されていた。その残骸を近くに放置されていた麻袋に詰めて、お側人の小屋に戻った。小屋にはテトラが出勤していて、食い入るように日誌を眺めている。日誌とは、その日起こった問題や、お側人が竜族からの相談事をどうやって解決したかとかを上に報告する書類である。昨日の件もテトラが日誌に書き、たぶん宰相グレイグがチェックしたのだと思う。
「おはようございます。テトラさん」
「お、早いな、ネリー……って、お前! それなにが入っているんだ!?」
テトラは大きい麻袋を引きずるようにしている私を見て、目を丸くした。麻袋に肉の血が滲んでいたからかしら? ……確かに、猟奇殺人鬼に見えなくもない。
そんな彼に、事の次第を説明した。
「オリオンはそんなに悪くなっていたのか……ちょっとした腹痛だと聞いていたんだがなあ」
「はい。とても辛そうでした。だから、少しでも食べられるように食材を工夫しようかと思って」
「ほう。で、竜たちの食材を持ってきて、ネリーはなにをしようっていうんだい?」
テトラが興味深く私を覗き込む。こんな子どもになにができる?っていう顔じゃない。彼の表情は、純粋な好奇心に満ち溢れていた。勤務二日目で、勝手なことをしている私なのに、迷惑な顔をせずに話を聞いてくれる姿勢。パルティナ国では、アッシュ以外、誰も私の話など聞いてくれなかった。でも、ここでは職場の環境が頗るいい。
『あ、ええ。いいわよ。オリオン、新しいお側人のネリーよ。彼女は私たち竜族の言葉がわかるとても貴重な人間でね、あなたにお話があるんですって』
オリオンは動かず、顔だけをこちらに向けた。美しい宝石ドラゴンアイと同じ色の瞳が、腹痛の苦しみに揺れている。ああ、体を動かすのも辛いのね、気の毒に。
「オリオン? おはよう。ネリーです。辛いかもしれないけれど、ちょっと聞かせてね。お腹が痛くなるのは、どんなものを食べた時?」
『……肉……とか。野菜やキノコでもたまに……』
「ちゃんと噛み切ってから食べている?」
『固くて……噛み切れないから、そのまま呑み込んじゃう……』
「そっか……」
固くて丸呑み……か。うーん、消化不良を起こしているのかもしれないわ。さっき見た小竜の食事は、大人と同じで肉も大きめ、果物や野菜も切らずにそのままだった。その辺に問題がありそう。オリオンだけが腹痛を訴える理由は、生まれつき消化器官が弱い可能性がある。人間だってひとりひとりに体質があるように、竜にだってあるに違いない。消化のいい食事に変えたら、少しは改善の見込みがあるわ。
とにかく、やってみないことには始まらない。
そう思い、私はシオンに向き直った。
「シオンさん、小竜たちの食事ですけど、私が手を加えてもいいでしょうか?」
『具体的にどうするの?』
「肉が固いようなので、柔らかくして、他の食材も食べやすくしようと思います!」
『肉を柔らかく? できるの?』
私は頷いた。前世の知識で一番多いのは、食べ物や料理に関する雑学だ。なぜかというと、好きなものが好きなだけ食べられなかったから。元気になったら、美味しい物をたらふく食べて丸々太ってやる。そう思っていたのだ。結局叶わなかった夢だけれど、それが今、役に立つだなんて人生なにが起こるかわからない。
オリオンを心配するシオンを残し、私は食事場に戻った。食事を終えた小竜たちは、広場へと遊びに行ったようでそこには誰もいない。食事場には肉と少しの果物が残されていた。その残骸を近くに放置されていた麻袋に詰めて、お側人の小屋に戻った。小屋にはテトラが出勤していて、食い入るように日誌を眺めている。日誌とは、その日起こった問題や、お側人が竜族からの相談事をどうやって解決したかとかを上に報告する書類である。昨日の件もテトラが日誌に書き、たぶん宰相グレイグがチェックしたのだと思う。
「おはようございます。テトラさん」
「お、早いな、ネリー……って、お前! それなにが入っているんだ!?」
テトラは大きい麻袋を引きずるようにしている私を見て、目を丸くした。麻袋に肉の血が滲んでいたからかしら? ……確かに、猟奇殺人鬼に見えなくもない。
そんな彼に、事の次第を説明した。
「オリオンはそんなに悪くなっていたのか……ちょっとした腹痛だと聞いていたんだがなあ」
「はい。とても辛そうでした。だから、少しでも食べられるように食材を工夫しようかと思って」
「ほう。で、竜たちの食材を持ってきて、ネリーはなにをしようっていうんだい?」
テトラが興味深く私を覗き込む。こんな子どもになにができる?っていう顔じゃない。彼の表情は、純粋な好奇心に満ち溢れていた。勤務二日目で、勝手なことをしている私なのに、迷惑な顔をせずに話を聞いてくれる姿勢。パルティナ国では、アッシュ以外、誰も私の話など聞いてくれなかった。でも、ここでは職場の環境が頗るいい。