転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
 族長の住まいに着き、オリオンの部屋に行くと、まだシオンが彼に付き添っていた。
『あら、ネリー。小竜たちの食事の件は上手くいったの?』
「はい。肉が柔らかくなったーって、皆たくさん食べてくれています!」
『まあ! よかったわね』
「あの、それで……オリオンにも食事を持ってきたのですが……」
 私はバスケットを開いて中身を取り出した。小鉢に入れた摺り下ろしリンゴ。柔らかく茹でたニンジン。薄味の卵スープ。どれも消化器官に負担をかけない食事だ。
『とてもいい匂いがするわね』
「オリオンは食べられそうですか?」
『うーん……どうかしら……』
 シオンは寝転がって向こうを向いているオリオンに声をかけた。
『オリオン、少し食べてみる? どれも柔らかくてお腹に優しそうよ』
『……いらない』
『そう……』
 ゆるゆると首を振り、私を振り返るシオン。オリオンを心配している気持ちと、折角作ってくれたのに無駄にしてごめんね、という謝罪がその瞳に表れていた。
 うん、無理強いはできないわ。無理して食べて、もっとお腹が痛くなったら困るもの。
「わかりました。もし、食べられるようになったらその時にでも……」
『ありがとう、ネリー』
 シオンに頷いて見せると、私はとぼとぼと食事場に戻る。テトラは落ち込んでいる私を見て、なにがあったかをすぐに理解し、口元を引き締めながら慰めてくれた。
 小竜たちと話し合い、毎食焼いた肉を出すことを決めると、テトラと一緒に狩猟(食料)担当の竜たちに会いに行く。食事場に卸す肉を、小竜たちの分だけ渡してくれないかと頼むためだ。狩猟担当の竜たちは非番の竜騎士隊で、竜族の中でも精鋭部隊である。彼らに事の次第を告げると、快く了承してくれた。
 魔獣ガルの肉は、竜たちの鋭い爪で捌かれて、各食事場に配給される。小竜たちの分だといって渡された肉はかなり大きく、私とテトラでは到底運べない大きさだ。そのため、竜たちが小屋の前まで運んでくれることになった。
 小屋で軽く昼食を取ったあと、テトラと肉の仕込みをする。人生初の筋切りをしたテトラは、加減がわからずおっかなびっくりで作業をしていたが、十枚も捌いたらすぐに慣れ、作業効率は格段に上がった。
 あとは焼くだけ、という状態にしておいてから、散歩ついでにテトラと近くの森を散策した。森は坑道の更に上にあり、深く迷いやすいという。でも、人の踏み込まない場所だからか、珍しい植物や果物が豊富なのだとか。竜たちが食べているリンゴなどの果物も森で採れたものが多い。
 木々の間の細い山道を行きながら、青く新鮮な空気を存分に吸い込む。思えば、前世では山に登ったことはなかった。巷で噂の森林浴やマイナスイオンなんて、遠い世界の夢物語だと思っていたっけ。
 それが健康状態で堪能できるなんて……。嬉しすぎて踊り出しそう!
 跳ねるように進んでいくと、そこに赤紫の実をつけたたくさんの樹木があり、その向こうに緑の実が成る木が生えていた。赤紫の実はたぶん『スモモ』だ。
 前世で入院していた時、看護師たちとの雑談から、この果物の名前を知ったのだった。
 雑談の内容は、妊娠時に一番美味しかった食べ物は? である。
その中で、ある看護師が『上の子を妊娠していた時はつわりが酷くて、スモモがとても美味しかったわ』と言った。
それで、スモモという果物に興味を持った私は、そのあとすぐPCで検索し、姿形を理解したのだ。
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