転生したらひとりぼっちだった私、最強国の冷徹大公に拾われる~不愛想な最強保護者のもとで、稀代の才能が花開きました~
 シリウスのこの作戦は成功する確率が高い、とグレイグは考えた。五体満足で男を逃がせば、黒幕はなぜ犯罪者を無傷で釈放したのかと勘繰るだろう。殺さない程度に尋問(瀕死になるまで拷問)して捨て置けば、黒幕は情報を引き出せずに諦めたのだという男の言い分を信じるはずだ。
 無駄がなく、ぬかりもない。
 淡々として手元の資料に目を落とすシリウスを、グレイグは感服の思いで見つめた。
 比類なきドラン公国の竜大公シリウス・ドラン。
 歴代の大公の中で最も秀で、最も無情で、最も冷酷。君主としてはとても素晴らしい人物ではあるが、寡黙で強面、感情を表に出さないことから『鉄仮面』などと噂されている。
 彼のおかげでドラン公国は豊かになり民の生活水準も高くなった。だが、あまり表に顔を出さない神秘性や噂に聞く残虐性のため、民からは恐怖の対象として見られていた。
 また、女性に一切の興味がなく、縁談も全て拒否。現在三十八歳であるが、三十歳の時にはもう、妹の息子を跡継ぎにすると決めているような頑固な男であった。
 ただ、宰相グレイグや竜族、竜騎士隊はシリウスに絶対の信頼を置いていた。
「では、そのように計らいます。あ、シリウス様、もうひとつご報告が」
 シリウスは視線だけをグレイグに向けた。
「パルティナ国の王女アルマが、ドラゴンアイを持っているそうです」
「……それで?」
「そのドラゴンアイは最上級のものでペンダントに加工されています」
「……確かか?」
 グレイグはしっかりと頷いた。
 ユルング商会は全国各地に根を張っていて、小さな国にも大きな国にも必ず出張所を構えている。彼らは、表向きは商売人であるが、密偵の役割も兼ねているのだ。パルティナ国に潜り込んでいる者が王宮へ商いに行った時、王女アルマの首にそれがかかっていたと断言した。
 最上級のドラゴンアイ、しかもペンダントに加工されたものは世界にひとつ。シリウスがその存在を忘れるはずがなかった。
「パルティナ国、王女アルマ。プリマヴェーラの噂がある者だったな」
「はい。パルティナ国へは、来週訪れる予定でしたよね?」
「ああ」
 シリウスは無表情のまま(つぶや)いた。読み取れない感情の中に、一瞬だけ浮かぶ懐旧の情。
それに気づいたグレイグは、やるせない気持ちを心中に抱え込んだ。
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