手フェチ女とピアニスト
「あの……僕、料理の写真をスマホで撮ってたんですけど、料理越しに犯行現場が写ってました!」
眼鏡の男性はスマホを掲げた。
声を上げた女性がそれを凝視する後ろで、涼と由麻も覗き込む。
写真は、美味しそうな料理のアップ。
その端に、声を上げた女性のお尻を触る手だけが写り込んでいた。
顔は写っていないものの、白くて綺麗な男の手は涼のそれに似ている。
「ほらやっぱり! 痴漢した上に白ばっくれるなんて許せない! アンタあのポスターの人でしょ、ピアニストの黒峰涼!」
女性が大声でまくし立てたせいで、周りの客がひそひそと小声で話し始める。
「あの人、有名なピアニストらしいよ」
「えーっ痴漢なんて最低」
大勢の客達から疑惑の目を向けられ、さすがの涼も言葉に詰まっていて。
「パッと見は似てるけど、これは涼さんの手じゃないです!」
由麻は、店内のざわめきをかき消すように大声で主張した。
「なんでそんな断言できるのよ!?」
食ってかかる女性に由麻は「よく見比べてください!」と言いながら、涼の手を取った。
もう片方の手で、スマホを指差す。