手フェチ女とピアニスト

「俺が持ってるやつを貸すよ。次はいつ来る?」
「えーと、金曜日の20時くらい……」
「じゃあ、約束」

 涼は由麻の目の前に、自身の小指を立てて見せる。

(指切りしよってこと? 小指も長くて綺麗~~!)

 涼の美しい指を間近で見て内心大興奮しつつも、由麻は自分の小指をそっと近付けた。
 すると、涼はすぐさま小指を絡ませて来て。
 初めて触れる涼の指は少しひんやりとしている。

「そうだ、連絡先交換しよう。もし来られなくなったら連絡して」
「は、はい」

 涼が小指を離し、スマホを由麻に向ける。

(ああーもっと絡めてたかった……けど、連絡先を自然に交換できてうれしい)

「お待たせしましたー、ご注文の烏龍茶と焼き鳥盛り合わせ、だし巻き卵っス」

 連絡先を交換し終わったタイミングで、由麻と涼が注文した料理が来た。

「だし巻き卵、美味しそうですね。今度頼もうかな」
「ああ、美味いよ。はい」

 涼は自分の箸でだし巻き卵一切れを掴んで、由麻の口元に持っていく。

(箸を使う手つきも綺麗~って、待って! 『あーん』待ちじゃないの……!)

 涼の手に見とれていて、反応が遅れた由麻。
 だし巻き卵を口元まで持って来られている以上、遠慮するのは不自然だ。
 思いきってぱくりと口に含む。

「んんっ!」

 由麻が美味しさを目で訴えるのを見た涼は満足げに微笑み、残りのだし巻き卵を自身の口に運んだ。

(間接キス平気なタイプ!? 海外暮らし長いから当たり前!? とりあえず、私嫌われてはいないよね……?)

 だし巻き卵を食べ終えた由麻は、火照る顔を冷やそうと烏龍茶を煽った。

(DVD貸してもらうだけだけど、次に会う約束もできたし、この感じで距離を縮めていきたいな)
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