ある熱帯の天使
帰りの電車では音楽に耳を傾ける。昔から好きな優しいクラシック。ベートーベンは激しくて怖く思えてやだ。シューベルトが最近のお気に入り。眼鏡が似合って素敵。シューベルトの音楽からは冬の寒さを感じる。寒い冬は好きだった。温もりを感じられるから。彼の腕の手のなかで、私はスーパーや親の前でいる私と違う私になれた気がした。大学生の彼は、私とは生まれが違う。同じ日本の少し離れたどこかで産まれた彼と私はどうして出逢えたのだろう。そんなことを一人でいると考える。だって、そんなこと口にしたら引かれてしまうかもしれないから。私は勇気が足りない。だけど、女の子には必要のないものかもしれない。だって、勇気がなくて損をしたことはないし。
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