おかえりが聞こえる病室
莉奈はティッシュを一枚取り、そっと亜美の手に渡した。

「今日はいっぱい泣いていい日。」

「頑張らなくていい。」

「我慢もしなくていい。」

亜美は涙を拭きながら、小さく聞いた。

「……なかないほうが、いい?」

莉奈は首を横に振る。

「ううん。」

「泣きたい時は泣いていい。」

「看護師さんのお仕事はね。」

少し笑って続ける。

「泣いてる子の隣にいることだから。」

その言葉に、亜美はきょとんとした。

「……そうなの?」

「そう。」

「だから安心して泣いて😊」

ママが思わず笑う。

「そんなお仕事なんですね。」

「はい。」

莉奈も笑った。

「結構、得意なんです。」

病室に、小さな笑い声が広がる。

それは、302号室で初めて聞こえた笑い声だった。
< 31 / 50 >

この作品をシェア

pagetop