おかえりが聞こえる病室
少し沈黙が流れる。

莉奈は無理に話しかけなかった。

病室には、点滴がゆっくり落ちる音だけが響く。

やがて亜美が、小さな声で言った。

「……おうちだったら。」

「もう、ねてるじかん。」

「そうだね。」

「おうちでは、寝る前に何してたの?」

「……えほん。」

「へぇ。」

「どんな絵本?」

「くまさん。」

少しだけ口元がゆるむ。

ほんの少し。

その小さな変化を、莉奈は見逃さなかった。
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