Ironic Honey
『おい。君だけ寝るつもりか? 俺は羽聖が生まれた感動と興奮で眠れそうにないんだぞ。だから酒を飲んでいるのに』

「私は体力使って眠いのよ。千織だってそんなに寝てないくせに」

『確かに。でも寝れないんだよ』


 千織の子供のような返答に笑っているうちに瞼が落ちてくる。

 彼の声が落ち着く。しばらくこんな風に彼の声を落ち着いて聞けていなかったような気がする。不安と痛みと戦うことに必死で。

 千織だって私を支えようと戦ってくれていたのに、彼の声をよく聞けていなかった。


「眠くなったのは、あなたの声のせいだから、あなたのせいね」

『なんだそれ。俺は君の声を聴いていろんな感情が溢れてるっていうのに』

「あなたって結構面倒な男よね」

『今更気付いた? 俺は面倒だし、完璧のかの字もない、そんな男だよ』


 酔っているせいか、誰も何も言っていないような言葉まで言い出している。このまま放っておけば、聞いてもないようなことまでどんどん話してくれるのではないかと思った。

 ほんの少し楽しくなり、千織が話し始めるのを待っているとそのうち『俺に子供か…』と感傷に浸りだしてしまった。
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