Ironic Honey
 午前三時、返信は来ないだろうなと思った。

 千織から«今夜は本当にお疲れ様。また明日も会いに行く»とそんなメッセージが届いており、私は口元に笑みを浮かべた。


«千織もお疲れ様。ゆっくり休んで»


 そう送り付けてスマートフォンを充電器に差し込み、ベッドの横に置こうとすると、電話が鳴った。相手は千織だった。起きているだなんて思わなくて驚いた。

 通話ボタンを押して「もしもし?」と電話に出ると、しばらく無言だった。何も返事が来ない千織に、電話が実はつながっていないのかと思い、画面を確認したが、きちんと秒数がカウントされていた。

 通話は始まっているはずなのに千織の声が聞こえない。


「千織?」

『…聖菜?』

「ちょっと、酔っぱらってるの?」


 いつもよりふわふわとしているような声に、眠たいのか、酔っているのか。千織は私の問いかけに少し笑って「酔ってる」と返答してきた。

 珍しい。普段からお酒はそんなに飲む方でもなく、時々飲むくらいなのに、それも酔うくらい飲むなんて。


『…早く帰ってきてくれ』

「何よ。珍しいわね」

『今、会いたくて仕方ないんだ。面会時間前だけど、開けてもらえるかな』

「無理に決まってるでしょ。馬鹿ね」


 無茶苦茶を言っている千織に少し笑って、ベッドに座っていたのを横たわった。

 さっきまでは眠れそうにもなかったけれど、千織の声を聴いていたら眠くなってきた。
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