Ironic Honey
 その日、昼間に母も顔を出してくれた。生まれてすぐ、家族は見に来てくれたのだけど、入院中にあまり人が来るとかえって疲れるからなんて言っていて、母は来ることを遠慮していたようだった。


「何か飲み物を買ってくるよ」


 千織はそう言ってベッドの横に椅子を近づけ、母に座るよう促す。


「ありがとう。気が利く人ね、本当に」

「光栄です」


 千織はそう言って微笑むと、病室の外に出る。

 正直、ありがたかった。千織には吐けない弱音を吐きだしたかったから。


「お母さん、少し相談してもいい?」

「どうかした?」

「実は…、私、見ての通り甘え下手だから、頼ってもいいって言われても、中々いけないところがあるじゃない?」

「そうね」

「看護師さんにも言われるのよ。夜泣きが辛ければ預けていいですよとか、もっと頼って一人でリフレッシュしていいとか。でも…、今後は今みたいに二十四時間体制で誰かに頼れるわけじゃないと思っていて、それなら一人でもうまくやる方法を身に付けないといけないって思ってるの」

「どうして?」


 母の優しい問いかけに、言葉を選んで話そうとするのをやめ、感情が溢れていた。

 話している間も寝不足の辛さでか、感情の制御が効かず、涙腺が崩壊しあふれ出す。
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