Ironic Honey
「千織は、育休を取ったと言っても、二十四時間子育てには使えない。彼は出来る限り子育てに専念すると言ってくれたけど、結局在宅とかで対応しなきゃいけない案件もある。そうなったら、夜は寝てもらわなきゃいけなくて…

最初の一ヶ月の昼はお母さんが来てくれたとしても、その後は一日ワンオペになる想定でいなきゃならない。今でさえこんなに頼れなくて躓いているのに、退院した後が、すごく不安なの」


 母は黙って聞きながら、涙をティッシュで拭き取ってくれた。

 千織に言えないのは、こんな弱音を吐いたら彼が無理をすることもわかっているから。彼はきっと無理をしてでも羽聖や私を優先しようとしてくれる。

 これは出産前からのことだから。彼はどんなに忙しくても私の検診に付き添ってくれて、夜中に仕事をしていた日があるのも見ていた。

 彼はいつも「無理をしているわけじゃない。俺がそうしたいからそうしてる」って言ってくれてはいたけれど、この現状でいいはずがないとは思っていた。


「まず、羽聖ちゃんがあなただけの子じゃないのはわかってるわよね?」

「…うん」

「子育てだからね、大変なことに対して、無理しなくていいとかは言わない。聖菜が踏ん張らなきゃいけない時もたくさんあると思うけど、でも、頼れるときは頼るの」

「…わかってる。自分ひとりじゃできない時もあるって。でも、看護師さんにも千織にも、お母さんにも、私がやらなきゃって気になる。私は子育て以外何もないのに、何もできないのが苦しくて」


 母は私の言葉を聞くと、柔らかい声で笑った。
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