Ironic Honey
 翌日、羽聖を千織の両親に預けに来ると、案の定羽聖はギャン泣きしていた。

 義父も義母も戦場で敵を止めるかのように暴れる羽聖を必死に抱きとめ「ここは任せていけ!」と叫んでいた。状況がカオス。

 私も千織も苦笑いして、そのまま羽聖を預け、共に車に戻った。まだ泣き声が聞こえてきていて、何度も後ろ髪を引かれる。

 一緒にいてあげた方がいいんじゃないか。急に一人にされて不安なのではないか、と。

 当然彼の両親を信頼していないわけではない。だけど、羽聖は…。

 そう考えこんでいると千織は私の肩を抱き、歩き続ける。


「大丈夫だから。任せて」


 千織のそう言う声にゆっくりうんと首を縦に振り頷いた。

 いつも通り自分で車に乗ろうとドアに手を掛けようとすると、千織が素早く開けてくれる。それから、私が乗り込むのを待っている。

 千織の方を見て固まっていると、千織は首を傾げていた。


「今日は羽聖がいないから、当然だろ?」


 こうされるのが久しぶりだから忘れてた。羽聖が生まれる前は、絶対に千織がドアを開けてお姫様のようにエスコートをしてくれていた。

 それを思い出し、微笑んで車の中に乗り込む。私が乗り込んだのを確認すると、千織はゆっくりとドアを閉めた。
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