Ironic Honey
「まだ覚えてくれていたのね。こうしてエスコートしてくれていたの」


 千織が運転手席に乗り込んだタイミングでそう言うと千織は「忘れるわけがない」と言いながら、エンジンを点けシートベルトをしめている。

 羽聖が生まれたときは当然あの子を優先する。それを私も望んでいるし、千織がそうしてくれることがうれしいとも思う。

 だけど、二人きりの時は身重でもそうじゃなくても関係なく大事に扱ってくれることに驚いて、また、うれしかった。千織はどんな私でも平等に大事にしてくれるのだと。


「一人で身軽だから自分でやれって言われるかと思ってた」

「そんなこと言わないよ。どんな君だってできる時は出来ることをする」

「ふふ、そっか」


 迷いもなく言い切る千織に笑ってそう返事をし、窓の外を眺めた。今日はどこに行くのか、何をするのかも聞いていない。

 話がある、連れていきたい場所があるとそれだけ。実はほんの少し緊張もしている。

 今日は何が起こるのだろうかと。
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