Ironic Honey
「うちには、来週にでもどうかな。もし聖菜の予定が無ければ」

「多分大丈夫。というか、空けるわよ。予定くらい」

「そうか。じゃあ、来週。聖菜のご両親には都合がいい時を聞いておいてくれ」

「わかった」


 そう返事をしスマートフォンを取り出す。この連絡を送るのさえも気が重い。

 母はきっとそんな悪い反応にはならない。千織もすぐに気に入られると思う。

 それに私達はまだ出会ってから三カ月も経たない。お互いのことは、名前と年齢と、住んでいる場所、職場くらいしか知らない。彼が何を好んで、何を嫌うのかも、全く知らない。

 そんな相手と家族になろうとしている。簡単なことではないし、結婚や出産がゴールでもないことも理解している。

 だけど、私がここ三カ月で見ていた彼は、真面目で、誠実で、気遣いを忘れない人。後は…、時々ものすごく変。信用できる人だって、思っている。


「…今度、あなたの職場でも覗きに行こうかな」

「店に? それなら来る時、声を掛けてくれ。俺も店に行くようにするよ」

「基本的にいるわけじゃないのね?」

「基本は会社にいる。店舗には定期的に行くけど、常にいるわけじゃないから」

「そう」


 彼は自分で仕立てたスーツを、自分の店に置き、オーダーメイドも取り扱っている。普段から忙しい人で、こんな風に私のために時間を作れる人ではないと思うのだけど、必ず私を優先してくれる。
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