Ironic Honey
「あなたって、どこにそんな時間があるの? 私を優先できるような時間」


 そう問いかけると、千織は少しだけふっと笑みを零した。


「信用できる部下がいるし、優秀だから」

「周りは何も言わない? 女の事ばっかりって」

「そんな人間はいない。それに、穴を開けたところは別で埋めているから、聖菜が気にすることじゃない」

「…そう」


 彼なりに心配するなという言葉の意味なのだろうけれど。

 彼が大丈夫だというなら、私がこれ以上詰める理由もないと思い、それ以上は何も言わなかった。

 こんな風に誰かに優先され、こんなにも大事にされてきたことがないから、むしろそわそわする。

 過去の交際でも、それなりの距離感をどこか自分でも保っていた気がする。それは今も一緒で、私は千織とそれなりの距離感でと思っていたけれど、彼は気にせずずかずかと土足で踏み込んでくる。

 自分のテリトリーを荒らされるのは基本的に好きではないけれど、この人に踏み込まれるのは、なんだか嫌じゃない。むしろ気付いたら中にいるのが当たり前で、外から見守られる方がそわそわするかもしれない。

 既に千織を受け入れることを当たり前としている自分にも、思わず苦笑いを零した。
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