Ironic Honey
 翌週の金曜日だった。いよいよ明日は千織の両親の元へ挨拶に行く日だった。二人で食事をしている時、特に様子の変わらない千織の姿を見ていた。

 緊張とかはないのだろうか。自分の両親だから?

 私は当然緊張はしている。どんな人達なのかも知らなければ、どんな空気感で話ができるかもわからない。良い家柄でもないし、何も持っていない私は、まず歓迎されるのかもわからない。


「ねぇ?」

「ん?」

「私達、挨拶に行くって言ってもお互いのこと何も知らないじゃない? 何か聞かれても答えられないのはさすがにまずいんじゃないかと思って」

「まあ、俺は事前に説明しているから気にもしないと思うけど」

「説明って?」

「三か月前にバーで出会った素敵な女性だって言ってる」


 素敵なって…。

 そんなことにも少しだけ照れくさくなる。この人は真顔で誉め言葉を淡々というから、喜ぶのも反応するのもなんだか恥ずかしい。でも、本当はそう褒められるのは嫌じゃない。

 千織は私のそんな心情を知ってか、くすっと笑みを零し、水を喉の奥に流し込んでいる。飲み物を飲む時の喉ぼとけが動く様子や、グラスを掴んでいる手が骨ばっている、男性らしいところに目がいく。

 そんな自分の視線があまりにも変態チックなんじゃないかと羞恥心が沸き上がり、こほん、と軽く咳ばらいをして目を逸らした。
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