Ironic Honey
「あの日も思ったけど、笑顔が素敵だな」


 千織の言葉に思わず笑いが引っ込む。


「…何よ。急に」

「思ったことを言っただけ。君の笑顔は周りを明るくする」

「…そんなこと初めて言われた」

「周りが言わないだけで、みんな思っているよ」


 千織はなんでも言いすぎだ。周りの人ならお世辞だと思うのに、この人の言葉は不思議と心の中にすんなり落ちてくる。

 この人の真面目さと誠実さが嘘を吐く人ではないという信頼をさせていた。だから恥ずかしくもなるし、うまく流せない。

 顔が熱い。なんとか冷まそうと水を体内に流し込む。


「あなたは、よく変な人って言われるでしょ」


 私の発言に千織は首を傾げた後、楽しそうに笑った。


「変な人?」

「悪い意味じゃないわよ。そこが面白いとも思ったし、嫌いじゃないけれど、あなたは周りの男性とは全く違う。男性というか…、私の身の回りにあなたみたいな人はいない」

「それは光栄だな」

「光栄?」

「だから君の気を引けたんだろう?」

「…あと、あなたの顔がタイプだったのもある。十年若ければ、私が女性達みたいに口説いていたかも」


 千織は「はは」と声を出して笑った。そんな風に笑うのは初めて見たかもしれない。そういうところも男性らしくて、目が引かれる。
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