Ironic Honey
「あの日、隣に座っていたのが君じゃなかったら、俺も自分の恋人なんて嘘は吐いていないと思う」

「え?」

「君は俺に興味がなさそうだったし、一人で優雅に酒を飲む姿がいいなって思ったりもした」


 まさか彼にそんな風に思われていたなんて知らなかった。彼は全く私のほうを見なかったし、興味もないとすら思っていたから。


「全然気付かなかった」

「誰にでもあんなことはしない」

「…あなたって不思議な人よね。女性慣れしてなさそうと思えば、意外と手馴れているところもあったり、あなたという人がたまにわからなくなる」

「…慣れていないわけではないけど、女性にそこまで興味がなかった。俺はこんな感じだから、言い合いになるといつも平行線になるし、交際とか、そういうのはしないほうがいいと思った」

「なんで交際しないほうがいいって? 女性に興味がわかないって言ったって、いいなと思ったこともあるでしょ」

「両親に勧められて、お見合いもしてみたんだけど、何を話していいかわからない。後、どうにも自分を金としてしか見られていないような気もして」


 それもあるだろうけど、自分の顔がいい自覚はないのかしら…。

 そう思ったけれど口には出さなかった。千織は女性たちに多く声をかけられるほど、端正な顔立ちをしている。それに加え、お見合いだとスペックの高さも知られているから、家族ぐるみで離さないようにされそうだと、容易に想像がついた。
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