Ironic Honey
 風呂も済ませた後、先に寝る用意を整えていた千織がソファでタブレットを触っていた。

 もう後は寝るだけ。他にやることはない。

 千織がこちらに向いてタブレットをテーブルの上に置く。この人のアップされた前髪が下りているのを見るのは初めてかもしれない。一気に少し幼くなる。なんだか少し可愛らしい。


「もう寝る?」

「うん。そろそろ。早めにベッドに入っておかないと、ぎりぎりで入ると眠れなさ過ぎて困るかもしれないし」

「そうか。じゃあ、行こう」

「行こうって…、もしかして」

「もちろん一緒だけど?」


 そんな当然のように言われるとは思っていなかった。さすがに別々かと思っていたのに、千織の中では一緒に寝るのは決定事項らしい。

 千織は私の反応を見ると、手を握り「嫌か?」と問いかけてくる。

 そんな聞き方、ずるい。当然嫌ではないけれど、羞恥心がある。一緒に寝るのはあの夜以来だし、どうしても意識をしすぎてしまう。


「…一緒に寝ることも慣れないと」

「…その慣れを都合よく使ってるでしょ」

「バレた?」


 珍しくいたずらっ子の顔をして笑う彼に、私も自然と笑みがこぼれた。意外とこんなおちゃめなところもある。
< 44 / 132 >

この作品をシェア

pagetop