Ironic Honey
Episode1
 夜が深まり、アルコールも進んで、話はお互いの近況の話になった。


「へぇ、やっぱりそういうお家柄だと、結婚しろとか言われるんですね?」

「結構ね。俺は、別に跡継ぎを作る必要はないと思っていて、優秀な人物に会社を渡すって選択肢でもいいと思うんです」


 彼はただの仕立て屋ではなく、そこの社長をしているらしい。どれ程の大きな会社かなどは調べていないから想像もつかないけれど、その立場が今、プライベートに侵食してきそうになっていると悩んでいた。

 彼は恋愛に興味がなく、特にしなくてもいいと考えている人だった。私は、恋はもうしなくてもいいと諦めがついた状況なので、ほんの少し親近感が湧く。


「私には、あなたのご両親も、あなたの立場も分からないけれど、すごく厄介なんですね」

「ええ。一人で生きるとこっちは腹を括っていても、やっぱり孫が見たいが大きいみたい」

「なるほどね」


 うちは親にも呆れられつつも、未だにちくちくと言われる。


「あんたみたいなのを貰ってくれる男性はいないか」


 おまけにため息つき。失礼な親だ。


「私は、営業職をやっているのですが、よく会社の人や、取引先の人にも言われますよ。結婚した方が良くない? 子供は可愛いぞとか、いろいろ。どんな目線でのアドバイスなんでしょうね」

「企業の営業職…、特に年功序列のところだと、古い昭和世代の考えも染み付いていますから、言う人もいるでしょうね」

「わかりますか? 親が言うのはわかるんです。親心。でも、会社の人はなんなんですか? あれ」


 ため息を吐きながら話すと、千織さんは苦笑いしている。
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