Ironic Honey
「お互い、やりづらいことばかりで」

「そうですね」


 そう言って千織さんはアルコールを口元に運んだ。それからふと煙草を取り出した。

 喫煙者なんだ。

 そう思いながら少し安堵し、自分もアイコスを取り出した。


「やっぱり」

「え?」

「何度もジャケットのポケットに手が伸びかけていたので、吸いたかったんじゃないかなって。自分も喫煙者だから、吸えない時にふと出る行動に親近感がわいて」

「はは、お恥ずかしい」


 そう言いながら、遠慮なく口に咥え蒸かす。あまり初対面の人の前で吸わないようにしているのだけど、ここまでしばらく長く話すともういいかと開き直り、堂々と吸い始める。

 もう十年近くの付き合いがある。一時間程度や集中していれば吸わなくても平気なのだが、普段は無いと耐えられない。

 仕事は好きだけど、理不尽な頭のおかしい人間を相手にすることも多く、ストレスで余計に煙草に手が伸びる。つまり、私はこれに逃げている。


「俺も吸うので助かります」

「ならよかった」


 そんな会話をしながら、後は普段のなんてことない話をああでもない、こうでもないと言いながら話す。

 意外と悪くない時間だった。何の目的もなく、時間が許す限り話をして一緒にいるのも。
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