Ironic Honey
 服の上から手を優しく置くと、それから撫でる。


「…もう胎動は感じる?」

「いいえ、まだね。そろそろ動き出す子もいるって見るけど、この子は大人しいみたい」

「そうか。楽しみだな、動き出すのが。焦らされたら、焦らされるほど」

「Mなの?」

「そうかもしれない」


 私のからかいに冗談を返し、また笑っている。

 こんな冗談も通じる人だったなんて、思わなかった。初めて会ってから、彼はずっと真面目だった。返答も態度も何もかも、こんなに柔らかい人でもなかったのに。

 今の彼の方が、ずっとずっと好き。


「名前は?」

「性別決まってからと思ってた。画数とかこだわる人?」

「俺は特に。うちの両親はこだわってつけてくれたようだけど」

「私も気にしないかな。歳をとっても変に思われない名前がいいわね」


 ふと考えた時に千織という感じがものすごく珍しいと思った。ちおりと読む人は、いたかもしれないけど。


「名前、あなたは珍しいよね」

「母がアパレル関係の仕事をしていたから、織って感じがすごくいいんじゃないかって。後付けだって言っていたけど、お陰様で俺もスーツを作っているし、縁起はいいよな」

「確かにね」


 そんな話をしながら、夜を更かしていった

 あなたと過ごす時間が長くなる度に、魅力的に感じて、愛が濃くなる。

 あなたもそうならいいのに。
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