Ironic Honey
 帰りの車の中は会話が一切なかった。二人共何も話さず、エンジン音が静寂を支配しており、私はぼーっと窓の外を眺め、今日のことを考えていた。

 父と本気でぶつかり、ひどい言い方もしたけれどわかっていた。本気で心配してくれていて、親心なのだと。

 そんな父に対して、あんな言い方をした自分に自己嫌悪を抱いた。もっと他に言い方があったのではないかと。

 感情に制御がきかないことがこんなにも厄介なものだなんて知らなかった。どうしてそうなるかも、自分は理解していなかったと思う。


「少し、寄り道してもいいか?」


 考え事をしていた私に、静かな声で話しかけてくる千織。


「寄り道?」

「早く休みたいならこのまま帰る」

「いいけど。珍しいわね。あなたから寄り道だなんて」

「たまにはいいだろ」


 千織が柔らかく笑うのを見て安堵した。彼の方が気にしているはずだと思っていたから。意外にもいつも通りで笑っていてくれていて、私は彼の悲しい顔を見たくない。
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