Ironic Honey
「でも、同棲してからが始まりって言うじゃない。絶対生活的に合わないところも、価値観だってすれ違うでしょうし」

「…もうあれこれ五ヶ月くらいの付き合いになるわけだけどさ、嫌なところ無いのよね。怒るところもない、というか」


 そう話した後、怜奈は分かりやすく顔を顰めていた。彼女が言いたいことがわかる気がする。


「「そんな人間いる?」…でしょ?」


 言葉がハモると怜奈は軽く小っ恥ずかしそうに咳払いをして、手元のミートボールパスタをクルクルと巻いた。


「だって、あんな小田原くんにだって嫌な所あるのよ?」

「へぇ、爽やか王子の嫌な所気になる」

「靴下を逆さで脱ぐ。そんで、床に放置」

「うわ、臭そ」

「ムカつくことに臭くはない」


 臭くないんかい。

 そう思いつつ溜息を吐く怜奈を眺める。


「言ったら床に放置だけは直ったけど、逆さはそのままね。私が怒ることが多くて、小田原くんは謝るから喧嘩にはならないけど、何度も同じことを言うのは疲れる。でも、好きだし…、こんなもん可愛いもんか? って思っちゃう」

「我慢は良くないわよ」

「わかってるけど、言っても言わなくてもストレス溜まるなら、言わない方がいいかもと思うのよ。喧嘩になったことないけど、万が一なったら嫌だし」


 きっと彼女の話しぶりを聞いていると、そんな小さな嫌な所はほんの一部なのだと思う。

 家族で住んでいても嫌なことがあるのだから、全くの赤の他人から始まった関係なんて、そりゃ嫌なことがあって当然だと思う。
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