Ironic Honey
「久しぶり。結婚、したんだな。妊娠も」


 そう言って私の左手の薬指を見ては、複雑そうな表情で顔を歪めていた。


「…そうね」

「今、時間ある? せっかく会えたし少し話したくて」


 そういう篤史に「あー…」と声を漏らし、スマートフォンを見た。

 迎えを読んでいなければ、この誘いに応じたかもしれない。だけど、今は千織が迎えに来る。おそらくあと数分。


「…ごめん。旦那が迎えに来るんだ」

「そ、っか。じゃあ、ここで。あの時は、身勝手に別れを選んでごめん」


 そう言って頭を下げられ、目を見開いた。こんな風に謝られることなんて想像もしていなかった。

 だって、別に篤史を恨んでいるとか、ひどいことされたとか、そんなこと何も思っていなかった。その前から、自分を誰も最終的に選ばないだろうという考えはあったし、振られても当然のことだと思っていた。


「ちょ、っと、やめてよ。終わった話でしょ」

「冷静になってから、ずっと後悔してた。自分勝手で、聖菜を傷つけるかもなんて、何も考えていなくて…」

「いいから…!」


 彼をそう止めても責任感からか、全く顔を上げてくれない。
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