Ironic Honey
 謝罪がいらない理由は、そもそも普通のことだからと思っていたのもあるけれど、謝罪をされたことで当時の気持ちを少なからず思い出すからだ。

 当たり前だなと自分で割り切っていたからと言って傷つかないわけではない。人間だから傷付くし、思い出せば嫌な気持ちになる。

 そして謝罪で楽になるのは言った本人だけだ。時間が経過してから謝られると、許さないと根に持つ器の小さい人間だと思われ、言われた側は多少謝られて報われた気持ちになっても、当時のことは消えないのだ。心の奥にずっと染み付く。


「…もう、やめて」


 心から出た言葉だった。篤史はようやく顔を上げて私の方を見る。

 もう、聞きたくない。謝罪も、言い訳も。それに対しての答えなんて言いたくない。

 心の内でこんなことを考えるのも、気が滅入る。

 別に彼がした発言は、彼だけではない。その上、他の女性を選んだ男性はかなりいる。だから、何も言わないで、私にはずっと触れないでいてくれた方がよかった。

 そう考えこんでいると、後ろから腰を抱き寄せられ、ふと驚いて顔を上げる。
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