Ironic Honey
Episode9
 そろそろ妊娠七か月になり、生まれるまで残り三か月。来月には少し早めに産休にも入る予定だった。

 そして最近ようやく千織の家への引っ越しが済み、今は無事に共に暮らしているのだけど、あまりにも遅い引っ越しに千織にちくちくと言われていた。私は引っ越しの荷解きをしながら苦笑いして、その小言を受け止めている。


「俺は楽しみにして君が住める空間を何か月も前から整えていたのに、君はそうじゃなかったんだ?」


 そういわれ、初日は気まずい思いをした。当然千織は本気で言っているわけではなく、揶揄っている。


「私だって、楽しみにはしてたのよ…? でも、最近ようやく引継ぎが終わって…」

「君のおなかはこんなに大きいのに考えるのは仕事のことだけ?」


 そう言いながら、後ろから私のお腹を優しく撫でている。


「いや…、うん。おっしゃる通りで」


 私の気まずそうな態度にクスクスと笑っていて、優しく腹を撫でながら「羽聖《うみ》、どう思う?」と話しかけている。

 羽聖というのは、私達の子供に付ける予定の名前だ。病院ではおそらく女の子で間違いないと言われている。それからお互いに名前を考え、羽聖という名前は千織がつけた。

 長谷川 羽聖。今からこの名前で顔を見ながら呼んであげるのが楽しみで、私も一緒に千織の手の上に手を重ね、自身の腹を一緒に撫でた。
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