Ironic Honey
 翌朝。頭痛で目が覚める。

 隣を見ると、これまた自分のタイプの男性があどけない寝顔をしていた。

 そこで、やってしまったと溜息を吐く。

 こんなことは久しぶりだし、普段あることではない。シーツで胸元を隠すと、ゆっくりと目が開いていく。それから漆黒の瞳が私を捉え、ゆっくりと身体を起こす。

 昨日はゆっくり見ることも出来なかったけれど、程よく割れており、いい身体付きをしている。


「…おはよう」


 掠れた低い声。困ったことにこの声もタイプ。


「おはよう」

「二日酔いは?」

「最悪」

「…そうか」


 それだけ言うと、何事もなかったかのように、シャツを身に着けている。

 案外ドライなものだ。慌てる様子も、こちらの身体を気遣う様子もない。

 こちらも一夜限りなのだから、そのくらいで全く構わないのだけれど、慣れてないところを昨夜まで見ていたはずなのに、次の日の朝には随分あっさりしている。こういう所は少しつまらない。

 私は時間を確認し、ただただ着替える千織さんを見ていた。


「ああ、それと、これを渡しておく」


 千織さんは私に小さなカードを渡した。それを受け取り、中身を見ると、千織さんの名刺のようだった。

 Vincenzo 代表取締役 長谷川 千織。その下に連絡先や会社の場所、店舗がある場所が書いてある。私でも聞いたことがあるような会社だ。かなりの大手。


「…恥ずかしい話だけど、きちんと避妊が出来ていたかも記憶がない。もし、何かあれば責任を取るつもりだ。だから、連絡してくれ」


 それだけ言うとスーツを羽織り、ホテルを出ていく。

 昨夜とは違う。淡々とした態度。本当に、変な男。
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