ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。

 その日の夜も、寝る前、柔らかい毛布に包まりながら通話した。

『今日、ありがとう』

『……弟にソフトクリーム乞食しないでもらっていい?』

『弟なんて、思ってないよ』

『どうだか』

 拗ねたように鼻で笑う音が聞こえた。
 私は、少し速くなる心音を感じながら、悪戯っぽく明かした。


『……クーポンなくなったって、嘘だし』


 スピーカーの向こうのハルは、黙り込む。

 やがて、私の意図――つまり『ただ会いたくて、適当な嘘をついて誘った』ということに気づくと、『……はっ?』と素っ頓狂な声を上げた。

 顔が見えなくてもわかるくらい、動揺していた。
 その反応が、可愛くて、こそばゆくて。
 胸の奥の甘い疼きを感じながら、クスクスと肩を揺らした。

 そして、また数日後に会う約束をして、眠りについたのだった。
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