ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。

「……初めてでは、ないけどさ……」

 中学時代に付き合っていた同級生と、帰り道に繋いだことはある。

「へえ」

 スクリーンから漏れる僅かな光の中、ちらりと横を確認する。
 口角は薄っすらと上がっていながらも、瞳の奥は少しも笑っていなかった。


「じゃあ、これは?」


 今度は、手のひらを滑った指先が、私の指の間へと深く潜り込んできた。


「……っ」

 その肌は、外の冷気を微かに残している。
 触れ合う面積が跳ね上がり、逃げ場のない火照りが広がっていくような感覚だった。

 この繋ぎ方は、したことがない。
 けれど――。

「それも……初めてじゃないけど」

 精一杯の平坦なトーンで、嘘を吐く。
『俺は経験あるけど、そっちは?』とでも言いたげな声に、妙に悔しくなってしまったのだ。

「……へえ」

 彼はそのまま、私の手の甲を親指で摩った。
 感触を、確かめるように。
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