ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。
「ちょ、ちょっと……っ」
抗議しようと顔を向ける。
「なに?」
至近距離で、視線が交わった。
なんで、そんな目つきや、手つきをするの。
理由はわからないけれど、一度捉えられたら逃げられなくなるような、強烈な引力を感じた。
慌てて目を逸らし、手も振り解く。
「……落ち着かない。それに、もう本編始まるよ?」
そう口にして、すんとスクリーンへ向き直る。
暗闇の中、ハルは小さく肩を揺らしていた。
シリアスなミステリー映画だったけれど、内容にあまり集中できなかった。