ねえ、はやく降参してよ。 ――同じ苗字になっても、まだ足りない。甘くて焦れったい心理戦を続ける夫婦。
 ◇

 その翌週の放課後。
 い草の匂いが漂う茶室で、目を輝かせる茶道部の後輩たちに囲まれる。

「週五で電話に、週一でデートって。付き合ってますよね?」

「…………」

 女子校という花園では、恋愛に関する話が大いに好まれる。
 少しでも浮いた話があれば、みんなして前のめりに興味を持つことが多い。
 入学してから三年間、ずっと群がる側だった私が、今やその標的だ。

「……さっきも言ったけど、デートじゃないよ」

 ふう、と息を吐きながら、後輩が点ててくれた抹茶を遠慮なくいただく。
 彼女たちには、文化祭でハルに連絡先を聞かれたところを目撃されているため、こうして定期的に進捗を確認されるのだ。

「デートじゃないなら、何ですか」

 気を抜くと、絡められた指の感触が甦りそうになり――口に広がる濃茶の苦味とともにぐっと飲み込む。

「向こうの暇つぶしに誘われてるだけ。今日だって、行き先ゲームセンターだよ?」

 昨晩、いつもの時間に電話がかかってきたと思ったら、その第一声は『ゾンビゲームやろうぜ』だった。

 この前、私が誤って弟の名で呼んでしまったときは、すっかり機嫌を損ねたくせに。
 ハルのほうこそ私を、放課後に遊べる『小学生の男友達』か何かだと勘違いしているんじゃないだろうか。

「もう、焦れったいなあ」

「…………」

 黙り込み、お茶菓子へ手を伸ばす。
 顧問の香坂先生が「多めに用意してるから、よかったらいらっしゃい」と声をかけてくれた、クリスマスシーズン限定の洋風の羊羹。
 ドライフルーツやナッツが詰まっている。
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