【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「じゃあね」

 彼と一緒に話をしながら列車でロンドンへ戻った。

 その後、彼はホテルへ送ってくれた。さすがロンドン在住外交官。

 英語はペラペラ、地下鉄にも詳しいし、正直とても楽だった。

 * * *

 ホテルの部屋へ戻ると母から来ていた多くのメッセージに返事をした。

 一時間ごとに連絡してきていて、返事がないと言って心配ばかりしている。

 その都度返したかったがさすがに無理だった。

 返信したら、時差があるのに心配で起きていたのか、すぐに電話が来た。

『返事がないから心配で眠れない。ねえ、危ないところに行っていない?ひとりで大丈夫なの?』

『大丈夫よ。ウインブルドンへ行って来たわ。コートツアーに参加したの。とても楽しかった』

 明日留美ちゃんの所は結婚式だし、返信できないこともあるだろう。

 結婚パーティーが終わったら、ウエディング写真を転送するから楽しみに待っていてほしい、何度も連絡してきてもおそらく結婚式だし返事が出来ないと伝えた。

「これでよし、と。明日の準備をしておこう」

 スーツケースから明日履いていく予定の靴やバッグ、アクセサリーなどを出した。

 お気に入りのライムグリーンのドレスはすでにチェストにかけてある。

「それにしても、あの人と再会するなんて、こんな偶然びっくり……よく見ると恐ろしくイケメンだったのね」

 あのときは顔がよく見えなかったのだ。背中に庇われていて、顔は本部長に向いていた。

 私はベッドにひっくり返って名刺を見た。そしてひらひらと名刺をふった。

 あさっての観光はどうなるかわからないが、彼に連れて行ってもらったら英語も堪能だろうし、正直楽だろうなと思った。

 彼が庇ってくれた時の姿がフラッシュバックした。二度目だ。

「助けられてばっかりだから、何かお礼にごちそうしようかな」

 私は名刺を財布にしまった。急いでシャワーを浴びる準備をした。

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