【改稿版】彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「そう。僕も昔テニスをやっていたことがあるから、イギリスに来たらウインブルドンは見たかったんだ」
「わかります。テニスをやる人にとってはウインブルドンは聖地ですよね」
「ウインブルドン選手権開催中はすごい人だし、なかなかチケットも取れないから違う時期の方がすいているだろうと思ったけど、今日もすごい人だったね。驚いたよ」
「そうですね」
「でもこんなんじゃ、大会中は身動きできないくらいの人だろうね」
「そうでしょうね。期間中はチケットも、ホテルも値段が高いから来られないですけどね」
「その通りだよ。住んでいたってなかなか来られない。でも今日のツアーでの説明は面白かったし、十分雰囲気は堪能できた」
ふたりで今見てきたことを話しながら盛り上がった。
趣味が合うせいか、話がとぎれず、せっかくだからと一緒にロンドンへ戻った。
彼は英語がペラペラでここの地下鉄事情にも詳しい。
私は来るときに地下鉄で乗り間違いをしそうになったので、彼がいてくれて何も考えずに戻れた。
「それで、蔵原さんはいつ日本へ戻るんだい?」
「えっと、明後日の夜の便です。イギリスまで来ると往復に日にちが取られて、ここにはあまりいられないですね」
「まあね。フライト時間が長いからしょうがない。僕も明日は用事があるんだ。あさってだったらイギリス観光につきあってもいいよ」
「本当ですか?あ、でも……明日次第なんですが……何もなければお願いしたいです」
「そうか、こちらに知り合いがいるんだったね。まあ、くれぐれも気をつけてね……二度あることは三度あるというだろう」
彼がため息をつきながら言った。
「はい、特にこちらでは服装や髪型に気をつけます。今日はありがとうございました」